医師の診療科の種類一覧と特徴を解説｜向いている人の傾向とは？

主な診療科の分類と役割の違い

診療科は大きく分けて「内科系」と「外科系」、そして「その他の専門科」に分類することができます。以下の表は、医師の診療科を基本的な分類に沿って整理したものです。

内科と外科の特徴的な違い

医学生や若手医師が最も悩むポイントの一つに、「内科に進むか、外科に進むか」という選択があります。この二つは医療の根幹をなす診療科でありながら、働き方や求められるスキル、日々の業務内容が大きく異なります。
内科は、問診と検査を通じて病気の原因を突き止め、主に薬物療法で治療を行う分野です。患者との関係は長期にわたることが多く、慢性疾患を持つ方と継続的に関わる場面も多々あります。高齢化が進む現代では、生活習慣病や認知症の対応も含め、総合的な判断力と丁寧なコミュニケーション能力が求められる分野です。
一方、外科は手術を中心としたアクティブな治療を行う分野です。外傷や急性疾患の対応も多く、短時間での正確な判断と高い技術力が必要です。手術のある日は早朝から準備を始め、長時間にわたることもしばしばで、体力的な負担は小さくありません。その反面、患者の回復が目に見えて分かる場面も多く、大きなやりがいを感じられるのが外科の魅力でもあります。

総合診療医や専門医という区分もある

医師の中には、特定の臓器に限らず幅広い診療を行う「総合診療医」もいます。また、学会が認定する「専門医」の資格を取得すると、その分野でより高度な診療を行うことができます。
最近では、地域医療の現場で総合診療医のニーズも高まっており、多様な患者に対応する柔軟さが求められます。

勤務医と開業医という違いもある

働き方の違いとして、「勤務医」と「開業医」に分かれます。勤務医は病院やクリニックに勤める医師で、チーム医療の一員として働くのが一般的です。一方、開業医は自身のクリニックを経営しながら診療を行う形態です。
キャリアパスや働き方の自由度、収入の安定性などにも違いがあり、ライフスタイルに合わせた選択が求められます。

一般内科：幅広い症状に対応する

特定の臓器に限定せず、風邪や高血圧、糖尿病など、日常的に見られる症状や慢性疾患に幅広く対応します。地域医療や家庭医療の現場でも活躍しています。

循環器内科：心臓や血管の病気を診る

心筋梗塞や狭心症、不整脈といった心臓関連の病気を専門とします。緊急対応が必要なケースも多く、迅速な判断力と集中力が求められます。

消化器内科：胃や腸などの病気を専門とする

胃・小腸・大腸・肝臓・膵臓など、消化器全体を診る分野です。内視鏡検査などの技術も求められ、検査件数が多いことが特徴です。

呼吸器内科：肺や気管支の疾患に対応する

肺炎や喘息、慢性閉塞性肺疾患（COPD）などを扱います。高齢者や喫煙者が対象となることが多く、継続的な管理が重要です。

腎臓内科：腎臓機能の障害を扱う

腎不全や慢性腎臓病（CKD）、透析治療などに関与します。患者との長期的な関係構築が大切で、治療と生活指導のバランスが求められます。

内分泌・代謝内科：糖尿病や甲状腺疾患を診る

ホルモンバランスの異常に関する疾患を専門とし、特に糖尿病患者の数が多いです。病気の進行をコントロールすることが主な目的となります。

神経内科：脳や神経の病気を扱う

パーキンソン病や脳梗塞、てんかんなど、神経系の慢性疾患を中心に診療します。問診や診察の細かさが問われる、非常に繊細な分野です。

一般外科：消化器系の手術を中心に行う

胃や腸、肝臓、胆嚢など、主に消化器系の臓器を対象に手術を行います。急性腹症やがん治療の一環として、外科的治療が必要になることも多く、幅広い症例に対応します。

心臓血管外科：心臓や血管の手術を担当する

心臓バイパス手術や大動脈瘤の手術など、高度な技術が必要とされる分野です。手術時間も長く、集中力と体力が求められます。チーム医療の中核として働くことが多く、重症患者に向き合う覚悟が必要です。

脳神経外科：脳や脊髄の手術を行う

脳腫瘍やくも膜下出血、外傷などの治療に関わります。繊細な部位を扱うため、極めて高い精密さと集中力が求められる診療科です。急変も多いため、緊張感を持続できるタイプに向いています。

整形外科：骨や関節の治療と手術を行う

骨折や脱臼、関節疾患、スポーツ外傷などを手術やリハビリを通じて治療します。高齢化の進む社会では、整形外科の需要も年々高まっており、介護予防とも密接に関わっています。

形成外科：外見の修復や再建手術を行う

先天性異常や事故・がんによる欠損部分の修復、美容的な再建を目的とした外科分野です。見た目の回復に焦点を当てるため、繊細で芸術的なセンスも求められる分野です。

小児外科：小児特有の外科疾患に対応する

新生児から中学生までの子どもを対象とした外科治療を行います。臓器の大きさや成長過程を考慮した特有の知識と技術が必要とされ、家族への説明やサポートも重要な役割です。

皮膚科：皮膚や爪、髪の疾患を診る

アトピー性皮膚炎、ニキビ、水虫などの一般的な皮膚病から、皮膚がんの早期発見まで幅広く対応します。手術も行いますが、主に外来中心の診療が多く、ワークライフバランスの取りやすさから人気があります。

眼科：目の病気や視力の問題を扱う

白内障、緑内障、網膜剥離など、視覚に関わる疾患を専門とします。手術件数も多く、高い精密性が求められる一方、患者の生活の質（QOL）に直結するため、やりがいも大きい分野です。

耳鼻咽喉科：耳・鼻・喉の症状を診る

めまい、中耳炎、アレルギー性鼻炎、声のトラブルなどに対応します。手術もありますが、外来診療が中心となることが多く、患者層は小児から高齢者まで幅広いのが特徴です。

泌尿器科：尿や男性生殖器の病気を扱う

前立腺肥大、腎臓結石、膀胱炎、不妊症などを治療します。高齢化に伴い泌尿器疾患の患者は増えており、今後さらに需要が高まることが予想される診療科です。

放射線科：画像診断や放射線治療を行う

CT、MRI、X線などの画像をもとに病気を診断する「診断放射線科」と、がんなどに対して放射線治療を行う「治療放射線科」に分かれます。直接患者に接する機会は少ないですが、医療の裏方として欠かせない存在です。

麻酔科：手術時の麻酔管理を担当する

手術中の全身麻酔や局所麻酔、術後の痛みの管理を担います。また、救急医療や集中治療にも関わるため、急性期の患者への対応力が求められます。

リハビリテーション科：機能回復を支援する

脳卒中後のリハビリや整形外科手術後の機能回復をサポートします。医師だけでなく理学療法士や作業療法士など多職種と連携しながら、患者の生活を取り戻す手助けをする分野です。

勤務医と開業医の収入・勤務時間の比較

内科系は観察力と継続的な対応が得意な人に向いている

外科系は手先が器用で決断力がある人に向いている

外科は緊急手術や命に直結する場面が多いため、素早い判断と冷静な行動が必要です。また、手術の成功率は手技の正確さにも左右されるため、手先の器用さや集中力も大切です。
短時間での判断を求められることが多いため、優柔不断なタイプよりも、即断即決できる性格の人に向いています。

マイナー科は専門分野への探究心がある人に向いている

患者との対話を大切にする人は総合診療科に向いている

総合診療医は、特定の臓器にこだわらず幅広い症状に対応します。そのため、患者との信頼関係が非常に重要であり、コミュニケーション能力が大きな武器になります。
人との会話が好きで、柔軟に対応できるタイプの医師にとって、非常にやりがいのある分野です。また、地域医療や在宅医療など、社会との接点も多いため、医師としての幅広い経験が積めます。

自分の性格に合っているか？

何にやりがいを感じるか？

外科のように「目に見える成果」が欲しいのか、小児科のように「成長を支える喜び」に価値を感じるのかは大きな分かれ道です。

ワークライフバランスを重視するか？

将来的なキャリアパスや開業可能性を見据えているか？

将来開業を視野に入れているなら、地域ニーズが高く設備負担が少ない科が適しています。

見学・実習の機会を最大限に活用する

指導医・先輩医師に積極的に相談する

実際の経験に基づいた意見は非常に参考になります。失敗談も含めて聞くことがポイントです。

各診療科の専門医制度を調べる

ワークライフバランスや年収情報を現実的に確認する

理想だけでなく、生活設計の一部として診療科を捉えることも大切です。