訪問看護が合わないと感じる方へ｜
対処法・解決策を詳しく解説！

一人での判断や対応にプレッシャーを感じるから

訪問看護では、訪問先の利用者宅で看護師が単独で対応する場面がほとんどです。これは、病院のようにチームでその場ですぐに相談できる環境とは大きく異なります。体調の変化や処置の判断が必要な状況でも、自分一人で最善の判断を下さなければならないため、特に経験が浅い看護師にとっては大きな心理的負担となります。
たとえば、「この症状はすぐに医師に報告すべきか？」「今の処置で本当に適切か？」と迷ったとき、相談相手が近くにいないことが不安につながります。加えて、判断が間違っていた場合、その責任を自分一人で背負うことへのプレッシャーが強くなるため、「一人の現場」が苦手な人には向いていないと感じる要因になります。
このような状況に不安を抱えながら働き続けると、次第に仕事への自信を失い、精神的に追い詰められてしまうこともあるのです。

オンコールや緊急対応が生活の負担になるから

訪問看護ステーションでは、24時間対応の体制を求められるケースが多く、日勤以外にオンコール（緊急連絡への待機）を担当する場合があります。オンコールのシステムは、日中の勤務が終わっても、夜間や休日に緊急連絡が入る可能性があり、そのたびに現場に向かわなければならないこともあります。
これは看護師本人だけでなく、家庭やプライベートにも大きな影響を与えるため、生活全体にストレスが生じやすくなります。特に小さなお子さんがいる方や、家族との時間を大切にしたい方にとっては、「いつ呼び出されるかわからない」という緊張状態が続くこと自体が精神的な重荷になります。
加えて、オンコールの報酬が期待したほどではない場合、労働と報酬のバランスに不満を感じてしまうケースもあるでしょう。このように、オンコール業務は訪問看護を「合わない」と感じさせる代表的な要因となっています。

利用者・家族との関係構築が難しいと感じるから

訪問看護では、病院とは異なり、患者だけでなくその家族とも密接に関わる必要があります。家庭内での独自のルールや価値観を尊重しつつ、看護の専門性を発揮しなければならず、そのバランスに苦労することが多いのです。
たとえば、ある家族では「この薬の飲ませ方はこうしてほしい」「この時間帯以外には来てほしくない」といった要望がある場合もあり、看護師としての判断と家族の希望が一致しないこともあります。こうした場面でのコミュニケーションには、高い柔軟性と共感力が求められるため、対人関係の調整が苦手な方にはストレスとなりやすいのです。
また、感情的な訴えやクレームを受ける場面もあり、家庭という閉ざされた空間での人間関係が精神的な負荷につながることもあります。利用者のニーズに応えたい気持ちと、現実的な業務の限界との狭間で悩む看護師は少なくありません。

移動や訪問先環境がストレスになる

訪問看護のもう一つの大きな特徴は、一日に複数の利用者宅を訪問する必要があることです。そのため、移動時間が非常に多くなり、天候や交通状況によっては予定通りに訪問できないケースも出てきます。特に悪天候時の自転車移動や、長距離運転は体力的にも厳しく、「これが毎日続くのはつらい」と感じることがあるでしょう。
また、訪問先の住宅環境が必ずしも整っているとは限らず、清潔でない部屋や物があふれて足の踏み場がないような空間での作業を求められることもあります。このような状況で、感染対策や看護処置を正確に行うのは簡単なことではありません。

以下の表に、訪問看護の「移動・環境」に関する主なストレス要因をまとめました。

これらの物理的・心理的ストレスが積み重なることで、「訪問看護そのものが自分には合っていない」と感じるようになることも十分に理解できます。

報告書や記録業務の多さに疲れるから

訪問後には必ず、ケア内容や利用者の状態を記録する必要があります。さらに、報告書や連絡文書など、紙・電子問わず多くの事務作業が発生します。
訪問が終わっても「やることが多すぎる」と感じる看護師も多く、看護業務よりも事務に追われている感覚にストレスを感じる人も少なくありません。

判断力と柔軟性に自信がある人は向いている

訪問看護に向いている人の大きな特徴として、「一人で状況を判断し、柔軟に対応できる力」があります。訪問先では急な体調変化、家庭内のトラブル、計画変更など、予期せぬ事態が起こることも珍しくありません。そうした場面でも、冷静に状況を見極め、適切な処置や連絡を判断できる人は、訪問看護の現場で力を発揮しやすいです。
また、利用者や家族と信頼関係を築き、相手のペースに合わせた対応を自然にできる人も非常に向いています。人との関わりを楽しめるタイプ、自律的に動けるタイプは、訪問看護に適性が高いと言えるでしょう。

サポート体制を求める人は慎重な選択が必要

一方で、「すぐに相談できる環境が必要」「チームで確認しながら進めたい」といった協働型・慎重型の働き方を好む人にとっては、訪問看護のスタイルは孤独感や不安を感じやすいものになります。こうした方は、病棟勤務や施設看護など、チーム医療の中で協力して働ける環境のほうが、安心して力を発揮できる可能性が高いです。
また、「家庭との両立を最優先したい」「急な呼び出しがあると困る」といった生活の安定性を重視する人にとっては、オンコール体制のある訪問看護はストレス要因になることもあります。

以下に、訪問看護に向いている人と向いていない人の特徴を簡単にまとめた表をご紹介します。

どちらが良い・悪いというものではなく、自分の軸に合った環境で働くことが、長く健康的に仕事を続けるコツです。

自分の適性と仕事内容が合っているか

まずは、訪問看護という仕事そのものが自分の性格や得意なことと合っているかを見直してみましょう。たとえば、自分で判断して動くのが苦手な人は訪問看護の独立性に戸惑うかもしれません。
一方で、自分のペースで看護できることに魅力を感じる人には向いている仕事でもあります。「自分が何を大切にしているのか」を改めて振り返ってみることが重要です。

職場の教育・サポート体制が整っているか

訪問看護は基本的に一人での行動が多いですが、職場によっては新人や未経験者をしっかりサポートする体制が整っている場合もあります。逆に、教育体制が不十分だと、不安が強くなり「合わない」と感じやすくなります。
サポート体制やOJTの有無、定期的なフィードバックがあるかどうかなど、今の職場環境を客観的に見直してみましょう。

訪問件数やスケジュールに無理がないか

1日に訪問する件数や移動距離、休憩の取りやすさなど、勤務スケジュールが過密でないか確認しましょう。件数が多すぎたり、時間に余裕がなかったりすると、常に焦りながらの訪問になり、精神的に疲れてしまいます。
一時的な繁忙期なのか、常に無理がある体制なのかを見極めることも重要です。

人間関係や相談できる環境があるか

訪問看護は個人プレーに見られがちですが、チームでの情報共有や相談が不可欠です。困ったときにすぐ相談できる上司や同僚がいるか、報告・連絡・相談がしやすい環境かを確認してみてください。
人間関係が良好であることは、続けていくうえでの大きな支えになります。

他のスタッフはどう思っているか

自分の感じていることが「特別なこと」なのか、それとも「よくある悩み」なのかを客観的に知るためには、同じ職場で働く他のスタッフの意見を聞いてみることが有効です。たとえば以下のような場面での会話が参考になります。

• 月例ミーティングで「業務負担」についての意見交換
• 信頼できる先輩看護師とのランチや休憩中の会話
• 退職した元同僚にSNSやメールで意見を聞いてみる

また、看護師向けのコミュニティサイトや匿名掲示板、YouTube・Instagramなどでも、リアルな声や実体験を読むことができ、自分の悩みと照らし合わせるヒントになります。「自分だけがつらいわけではない」「同じことで悩んでいる人が他にもいる」とわかるだけでも、心が少し軽くなります。そこから「じゃあ、自分はどうしたいのか」を考える余裕が生まれてくるのです。

慣れの問題である場合

訪問看護は病院勤務とは大きく異なるスタイルのため、最初は誰でも戸惑いを感じます。特に最初の3か月〜半年は「やることが多くて大変」「一人が怖い」など、慣れないことへの不安が募りやすい時期です。
しかし、回数を重ねていくことでルーティンができ、少しずつ自信を持てるようになります。はじめの不安が「慣れ」で解消される場合も多いため、時間をかけて見極める姿勢も大切です。

周囲のサポートが受けられる場合

職場に話を聞いてくれる上司や先輩がいたり、困ったときにすぐ連絡できる体制が整っている場合は、支えを受けながら成長していける可能性があります。
「一人で抱え込まない環境」があるなら、合わないと感じる場面も乗り越えられるかもしれません。孤独感が軽減されるだけで、気持ちが前向きになることもあります。

自己成長の機会があると感じられる場合

訪問看護では、判断力・観察力・臨機応変な対応力など、総合的な看護スキルが鍛えられます。大変さはありますが、そのぶん「看護師として成長できている」という実感を持てる環境であれば、続ける価値は大きいでしょう。
スキルアップやキャリア形成を考える上でも、訪問看護の経験は強みになります。

訪問看護のやりがいを感じられる瞬間がある場合

たとえ大変でも、利用者や家族から「ありがとう」と言われたときや、在宅での生活を支えられたという実感が得られると、「やってよかった」と思える瞬間があります。
そのようなやりがいを感じる場面があるなら、まだ可能性は残されています。辛さばかりに目を向けるのではなく、ポジティブな面にも注目してみましょう。

不安や悩みを上司・同僚に相談する

まず最初にすべきことは、「一人で抱え込まない」ことです。訪問看護では現場が個別対応になる分、気づかれにくい孤立やプレッシャーを感じやすいですが、悩みを言葉にして共有することは、問題解決の第一歩です。
たとえば、オンコールの負担が大きいと感じるなら、「回数を調整できないか」「常勤と非常勤で分担できないか」など、実務的な相談が可能かどうかを上司に確認してみましょう。また、経験が浅い方にとっては、「判断に自信がないケースに同行してもらえませんか？」と先輩に声をかけるだけでも、不安は大きく軽減されます。
訪問看護ステーションには相談窓口や内部研修体制を整えているところもあり、遠慮なく周囲に頼る姿勢が、安心して働ける環境につながるのです。

スキル不足を補うための学習や研修の活用

「判断が不安」「処置がぎこちない」と感じるのは、自信や経験の不足が原因であることが少なくありません。これは誰にでもあることで、知識とスキルを積み重ねていくことで十分に解決できる課題です。
たとえば、訪問看護に特化したオンラインセミナーや、地域の勉強会、事業所が実施しているOJT（オン・ザ・ジョブ・トレーニング）に参加することが考えられます。また、訪問看護経験のある看護師のSNSやブログを読むことで、現場の知恵や工夫を学ぶのも良い方法です。
さらに、訪問看護認定看護師や在宅看護専門資格の取得を目指すことで、専門性を高め、自信にもつながります。学び続ける姿勢は、やがて現場での安心感に変わり、「合わない」という感覚を払拭してくれることも多いのです。

他の訪問看護ステーションへの転職を検討

今の職場で「合わない」と感じる場合、その原因が職場の雰囲気や体制そのものにあることもあります。訪問看護の事業所には、教育体制が整っているところ、チームでの同行訪問が充実しているところ、夜間対応がない施設など、さまざまな特徴があります。

たとえば、以下のような点を確認することで、自分に合ったステーションが見つかるかもしれません。

同じ訪問看護でも、職場が変わるだけで働きやすさが大きく変わる可能性があるため、転職という選択を前向きに考えるのもひとつの手です。

病院や施設などチームで働ける職場を考える

どうしても訪問看護のスタイルが合わないと感じた場合は、チームで連携して働く病院や施設勤務に戻る・転職することも検討すべきです。特に、以下のような職場は訪問看護に比べて働きやすいと感じる方が多い傾向にあります。

• 内科・慢性期の病棟：急変が少なく、比較的落ち着いた環境で働ける
• 老人ホームや有料施設：訪問よりも支援体制が整っており、協力体制がとりやすい
• 健診センターや企業内クリニック：定時勤務で、家庭との両立がしやすい

こうした職場では、自分の性格やライフスタイルに合った働き方が可能となるケースが多く、仕事に対する満足感や安定感が高まる傾向にあります。

自分が訪問看護を選んだ理由を再確認する

訪問看護を始めた当初、「患者とじっくり向き合いたい」「在宅医療に貢献したい」と思っていた方も多いはずです。しかし、忙しさやプレッシャーに追われるうちに、当初の思いや目標を忘れてしまい、「なぜこの仕事を選んだのか分からなくなった」と感じる人も少なくありません。
そこでまずは、原点に立ち返って、自分が訪問看護を選んだ動機を振り返ってみることが大切です。紙に書き出してみるのも良い方法です。

• 患者さんの生活に寄り添える仕事がしたかったのか？
• 病院ではできない個別ケアに魅力を感じたのか？
• ワークライフバランスを求めていたのか？

これらを思い出すことで、「今感じている不満は一時的なものか」「それとも根本的に合っていないのか」を客観的に判断できるようになります。

適性と希望を整理して方向性を明確にする

次に行うべきことは、自分の適性と、これからの働き方に対する希望を整理することです。「合わない」と感じた要因をはっきりさせ、それを回避できる職場を探すためには

以下のような自己分析が有効です。

このように「何を求めているか」「何を避けたいか」を整理することで、転職活動でも希望に合った職場を見つけやすくなります。転職サイトやエージェントに登録する際にも、これらの情報は大いに役立ちます。

転職活動を始める前にできる準備とは？

退職の意思が固まり、転職を本格的に進める場合には、準備を怠らないことが成功のカギとなります。以下に、転職活動前に行っておくと良い準備項目を紹介します。

• 情報収集：求人サイトだけでなく、口コミサイトやSNSで現場の雰囲気も調べる
• 職場見学：応募前に実際に職場を見て、雰囲気やサポート体制を確認する
• 条件整理：給与、勤務時間、通勤距離など、自分の譲れない条件をリストアップ
• 履歴書・職務経歴書の準備：自分の経験やスキルを整理し、具体的にアピールできるようにしておく
• 退職スケジュールの調整：引き継ぎや有給消化を計画し、トラブルなく辞められるよう配慮する

また、在職中に転職活動を進める方が、収入や精神面の不安を最小限に抑えられるため、できる限り同時並行での準備をおすすめします。

転職は「失敗からの逃げ」ではなく、「より良い自分の未来を選ぶための行動」です。大切なのは、他人と比較することではなく、自分が無理なく納得して働ける環境を選ぶことです。

看護師向け転職エージェントを活用して情報を集める

自分に合った職場を見つけるために、転職エージェントを利用するのもおすすめです。特に看護師専門のエージェントは、職場の内部情報や実際に働く人の声など、求人票ではわからない情報を提供してくれます。
「合わなかった理由」をもとに、次はどのような職場が向いているかを一緒に考えてくれるパートナーになります。